鍼灸師が教える武術気功・鍼禅(鍼灸と立禅)

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武術気功を学ぶことの意義

なぜ、普通の気功ではなくて武術気功なのか

 中国武術の鍛錬と気功は不可分なものです。気功という理念や技術がなければ、中国武術は一般のスポーツや西欧の格闘術と同様、筋力的な威力を求めて肉体を鍛えるだけのものとなってしまいます。

 中国武術では内功と呼ばれる鍛錬が必須。それは体内に秘められた功力(身体の地力)を内気の充足、流動とともに増幅させる鍛錬法で、いずれも丹田呼吸法がベースになっています。

 ここで行なう気功は、武術の鍛錬で必要な基礎となるもので、それを行なうことで敵と闘える強い身体を作り上げ、機能的に動ける体に仕上げていきます。闘いは元気でなければ勝ちはありません、なので武術気功を行なうことは健康な身体を手にすることになるのです。


 一般に行われている健康法や治療法としての気功は、“気功の初歩にすぎません”。相手(敵)から身を守る武術としての気功を学んでこそ、初めて自分自身の身体感覚がわかってきます。

 闘いにおいて相手を制するためには、強大な力を出した方が有利なはずですが、力に頼らず、肩、腰、股から力を抜いて、相手のバランスをとり、無駄のない合理的な動きをすることが重要です。身体の力をエコに使うことです。

 要するに身体の力を“上手く”抜くことが大切なのです。

 ただ、体から力を抜き切ることはそう容易ではありません。相手の存在を意識した途端に、あるいは「力を抜こう」と意識した途端に体は自ずと力んでしまいます。

 理想的な自分の体勢をとるためには、結局肉体だけでなく、人間の内面や意識の鍛錬、心身の自由自在のコントロールが必要になってきます。


 太極拳、形意拳、八卦掌、意拳(太氣拳)などの内家拳はスポーツではありません。西欧のスポーツはひたすら力に頼り、激しい動作によって肉体を消耗する。

 しかし内家拳は力を無駄に用いないから、体を動かして、たとえ汗をかいたとしても息が上がるようなことがありません。腰や内臓にも負担がかからないので、老人でも病人でも誰でも実践することができます。




静功と動功①

【静功が目指すもの】

気功の目的のひとつである不老長寿、健身という立場から静功の効果をみるならば、それは体内のストレスを取り去り、各臓器の働きや気血の流れを盛んにすることです。

 最近の医学の臨床研究では、心身を安静にしていくと免疫力や自然治癒力が高まってくることが明らかにされている。

 気功における静功は元来、道教、儒教、仏教の静的瞑想からきており、周りの事物に感覚や意識がとらわれず、また過去や未来のことに思いを巡らさず、今ここに「在る」だけになりきることである。体内に意識を集中し、体内に起こる微妙な変化や動きをただながめていくのである。しだいに心は澄み渡り、凪いた水面のように広がっていく。

 そこでは、姿勢を落ち着かせ、呼吸を整え、意念を集中させ、これらの調和によって体内に中心感覚が形成されます。つまり背筋を伸ばした姿勢を保つことで体軸が形成され、気を沈めて心を下腹におくことで、下腹部に丹田を感じてくる。

 その結果、体の姿勢が整うだけでなく、内臓の働きが活発になり、全身に活力が満ちるようになってきます。


*静功には、立禅(站椿功)、静坐功(坐禅)、臥式静功などがあります。



静功と動功②  

【動功とは】

動きを伴う養生法は起源が古く、紀元前1000年前後の殷・周の時代には古代中国舞踊として、祖先や神に狩猟や収穫を祝うときに舞ったとされる。

 それが祭祀における舞いという意味から離れて、人々の健康を利するための健康法として用いられたと考えられている。


 動功は、その名称どおり肢体を動かして練功を行います。古人は様々な動作を考案し、肢体の屈伸、回転運動、前後屈などで、これらの動作をもって全身の気と血の流れを伸びやかにし、各関節の動作を調整し、筋骨を強化します

 体の各部を個別に鍛錬することで局部の機能を高め、病人の場合は疾病内容に応じた功法を選択することで、症状の改善を期待することができます

 多くの動功法では呼吸法に併せて鍛錬するが、自然呼吸法が最適で、呼吸法を意識し過ぎて過渡になりすぎたり、息をこらして行なってたら意味を為しません。

 意念の運用も動功においては重要で、動作と意念を結びつけて行わなければなりません。練功を行なう過程では必ず精神を集中し、動作に意念を合わせるようにする。動作と呼吸を協調させようと意識することで、意念を鍛錬することになる。




病気になる人とならない人の違いとは

東洋医学には「虚実」という考え方があります。


 健康な人が徐々に病気になると「正気=病に抵抗する力」と「邪気=病を起こすもの」が戦います。

 体内に「正気」が「邪気」より多ければ、その人は「実」の状態で病気は大事に至らず元気に。

 一方、「正気」より「邪気」が多ければ、その人は「虚」の状態で病気の回復は遅くなります。

 健康は人には「邪気」の勢いを殺して治療すれば病気は回復します。


 ところが「正気」が健康人より少ない人が現代人には多いようです。

 例えば、疲れがとれにくい、食べたら胃もたれしやすい、ぐっすり眠れない、など“病気とはいえないが何となく不調”な方が多い。このような方は体質的に「虚」の状態で、他の人が元気なのに季節の変わり目に風邪を引いたりする人などが、これに該当します。

 虚証になる「正気」が衰える原因は人によって様々ですが、多分にライフスタイルが影響していると思われます。


 東洋医学の治療では「虚証」に対して気血などを補う「補法」の治療を施します。一方で健康な人が「邪気」の勢いに負けて病気になった人には「邪気」を体から追い出す「瀉法」を行います。

 つまり、体に過剰なものがあれば排泄し(瀉法)、足りないものを補い(補法)、身体内部のバランスをとって病を癒し、健康を保っていく、というのが東洋医学の考え方。

 この考え方は、気功法にも適用されていて、動功は瀉法で静功は補法とされています。

 

 動功では動作をもって邪気などの体内に溜まった不要な気を掃除して、内気の流れを活発にしていく。

 静功は外部からの気のエネルギーを取り込み、体内を循環させて心身を養っていく。

 動功、静功が陰陽の関係となり、相互に補完し合いながら養生という目的をはたしていくのです。